ごみとして排出する際に穴開けが要求されてきたスプレー缶やカセットボンベは、現在穴開けを義務づけられなくなっているが、方針の転換を知らない市民も多いようだ。方針を転換した市では、地域のごみ説明会や、全戸配布した「ごみの出し方便利帳・サポート編」などで変更を知らせ、「今は過渡期にある」として今後の周知は検討していないが、周知の方法に問題はなかったのだろうか。
平成十一年四月に発行されたごみの出し方便利帳では、穴を開けた上でごみ出しステーションの缶類の回収袋に入れることを説明している。スプレー缶にはエタノールや液化石油ガス(LPG)など、可燃性のものが噴射のための動力として使われているものがあり、缶にも「炎に向けて使用しないこと。火気を使用している室内で大量に使用しないこと」など注意書きがある。
ガスが入ったままのスプレー缶やライターが燃やすごみなどに混じり、車内でごみを圧縮するパッカー車で回収された場合、内部で圧縮された時に爆発し、ビニールごみなどと共に燃える危険がある。
今年度は一件、昨年度一件、一昨年度は二、三件、それ以前の多い年では五、六件の火災事故が発生している。
車両内のごみが燃え始めた場合、遅れれば車両内部に走っている電気配線も焼かれるため、電動操作のごみ出し入れ口が開かなくなる。その前に、燃焼中のゴミを含む内部のごみを全部、一旦近くの空き地などに出さなければならないが、適当な場所が見つからないことも多い。
空き地等に下ろされたごみは、消火作業の後、また車両内に積み込まなければならず、一回火災が発生すると四時間以上のロスが生じる。消防車の要請をすることもあり、消火のため、パッカー車には消火器と五十リットルの水のタンクを積載している。
穴開けの義務がなくなった理由は、容器包装リサイクル法施行に伴う分別方法変更の地域説明会で、参加者から穴開けがけがの原因になることが指摘されたことによる。空き缶の穴開けで負傷した事例が他都県で報告されていたこともあり、方針を変更する引き金になった。
空き缶が運ばれ、プレスする処理施設では、缶にガスが残っていた場合に生じる程度の爆発では機械に支障がないと判断され、ある程度ガスが抜けた状態では、穴開けの必要がないと判断された。
市民への周知については、地域説明会などで図ったというが十分とは言えない。全戸配布した「ごみの出し方便利帳・サポート編」には、変更事項として特記するのではなく、未変更事項と同様に全体の記載の中で紹介してあるため、変更が分かりにくくなっている点は否めない。
一方で、市では穴開けしない缶やライターが埋め立てごみなどに出されることを懸念しており、穴開けがけがの原因になることから義務でなくなったことを説明。けががないと判断された場合は穴開けしても良いことと、スプレー缶やガスボンベ、ライターなどのごみを、埋め立てごみや可燃ごみ、プラスチックごみとして出さないよう注意を求めている。
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