沼津商工会議所は、市内初のSOHO施設「ぬまづIT工房・ステップオフィス」の開所式を沼津商連会館(旧ニチイビル)五階、同工房前で開いた。IT(情報技術)を活用した地域産業、関連する人材の育成を目指す創業者の支援を目的に、同オフィスの入居者を募集。審査の結果、入居者五企業が選ばれ、それぞれ事業を開始した。
廃業率が創業率を上回るなど、深刻な経済不況が続く中で、昨年一月に政府のIT戦略本部は、「五年以内に世界最先端のIT国家になる」ことを目指す「e-japan戦略」を発表。政府と民間双方によるIT社会への転換を強力に推進していくことを目指しており、対象は政府内部だけでなく、医療や教育の現場、民間企業など、広く社会システム全体に及んでいる。
これを契機に、社会全体にIT化の波が押し寄せ、大手企業を皮切りに、全ての業種でIT化が急速に進展。行政が主催し、国民を対象にした「IT講習会」が開かれるなど、一般家庭までの浸透を図っている。
市と沼津商工会議所は、こうした社会情勢に呼応して、ぬまづ産業振興プラザを核にIT活用・普及事業などを活発に展開し、地域産業のIT化推進に取り組んできた。
同商工会議所は今年四月、ITによる地域経済を牽引する産業の育成と人材の集積、IT事業による雇用の創出と確保などを目的とした市内初のSOHO施設「ステップオフィス」の開設を決定。市の補助を受けて沼津商連会館五階、ぬまづ産業振興プラザ横の部屋に受け入れの準備を進め、IT関連のSOHO事業者や創業希望者に入居を呼び掛けた。
ステップオフィスでは、個人や少人数でIT事業を行う小規模の「SOHO事業者」に特化した入居者を集め、ぬまづ産業振興プラザが全面的にバックアップ。事業規模の発展や創業を支援し、ここをステップにして事業を軌道に乗せ、沼津を拠点に飛躍していってもらうことを狙いとしている。
同オフィスには、広さの違う五つの部屋があり、インターネットの回線や冷暖房が完備され、コピー機が実費で利用出来る。電気代も含む部屋の使用料は低額に抑えられており、会議用の机と椅子、パソコン一台を備える共有スペースは自由に利用出来る。
小規模事業者という不利な立場で苦難に立ち向かっていく入居者同士、互いに情報を交換し、技術を高め合い、時には仕事を協力して相互に発展していくことが期待されており、市内初の取り組みに、今後の推移が注目されている。
入居希望の応募は十人からあり、入居審査会の面接で五人が選ばれた。
寿町の松本徳子さんは、インターネットのホームページやデータベースなど(WEB)制作をする会社に勤めていたが独立。今後、データベースの作成やホームページの作成、SOHOのためのイベント実施などの仕事を行っていくといい、「一人だと出来ない仕事もあると思うので、入居者同士で得意分野を出し合って協力出来たらいいと思う」などと話している。
西椎路の齊藤真理さんは、WEBデザインやコンサルティング、グラフィックデザイン、オリジナル商品の企画・販売などを手掛ける会社を今年六月に設立。「これまで自宅で仕事を請け負ってやってきたが、これからは積極的に外へ出て営業活動をしていきたいと思い申し込んだ。高い技術を持っているが、それを生かせないでいる女声技術者も多いので、特に女性のSOHOを支援していきたい」という。
大塚三本松の赤堀貴之さんは、NPOアットコミュニティの理事長を務め、ぬまづIT講習会事務局などを務めている。ITサポートセンターを運営して、近隣地域のIT初心者や中級者向けの講習会事業、パソコンやITのサポートサービスを提供し、地域のIT化を進める事業に取り組むといい、「今まで一緒にやってきた仲間と共に、地域の情報化を推進していきたい」としている。
松下町の佐藤孝則さんは、WEB関連のサイト構築やシステム開発、レンタルサーバー事業などの会社を経営してきた。独自のデータベース開発や商品化も行っている。「人もある程度増えてきたので、事務所を借りようと思っていた時にこの話を聞いて、チャンスが来たと思った。このチャンスを生かしてステップアップしていきたい」と話す。
大平の友久保義明さんは、プログラマーとして長年会社勤めをしてきたが、定年退職を機に独立開業。まずは、これまで取引があった会社からの開発業務請け負いと、既に退職した友人達と共にIT関連の人材派遣を行う。「これまでいた大企業では実現出来なかった仕事のアイデアがたくさんある。まずは請け負いと人材派遣で資金を貯めた後、ソフト開発などをしていきたい」としている。
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